のれん償却・非償却への意見
2026年6月5日
鈴木健治
意見提出先
「のれんの非償却の導入及びのれん償却費計上区分の変更」に関する情報要請
https://www.fasf-j.jp/jp/news_release/402666.html (opens in a new tab)
提出した意見
質問2:のれんの非償却の導入を支持しない理由
日本は長寿企業が多く、インタンジブルズを活用した経営の支援をする際の観察では、主力製品について特許権が満了しているという事例が多く観察される。これは業種によらない。その主力品の差別化なり模倣困難の要因は、特許権による長年の独占で得たブランド力、流通支配力、技術力、保守運用のサービス化など、識別や明示が難しい市場での地位であると洞察でき、識別や因果関係が不明でも費用処理されていればなんら問題はない。
しかし、企業買収でのれんを計上すると、特許権満了後の自己創設による差別化要因が直ちにのれんに事実上混入する。そして、長寿で複数のM&Aが積み重なると、どののれんがどの金額なのか、識別が不可能となっていく。長寿企業が多いという日本企業のための会計基準では、買収時に規則的に償却が定まる仕組みが、比較可能性の点からも、測定の観点からも望ましい。
質問2:のれんの非償却の導入を支持しない理由
のれん非償却の要請については、事実上、国際会計基準を利用する追加負担は負えないが、定期償却の負担も負いたくない規模感や洗練さの企業が想定される。より広くみても、日本市場では、例えば自社の売上の一部を担う製品の特許権がいつ満了するかを開示し、パテントクリフの発生が資本市場においてサプライズにならないように事前に示す事例は、少ない。特に、ジョンソンアンドジョンソンやノボ・ノーディスクのように、どの製品の特許権がどの国でいつ満了となるかの事実を開示している例は、日本企業では発見が難しい。
この二重の現状、洗練されていない企業が特許権の満了など未来に起こることを開示しておらず、スタートアップ等も含む企業への資本市場の投資家もそのような情報を要求し咀嚼しない現状があり、企業開示とそのレビューによる規律は、日本の資本市場ではまだ弱さがあると評価すべきだろう。そのような局面では、定期償却が安全である。
質問1:のれんの非償却の導入を支持する理由
「非現実的な下記3つの条件」が満たされるのであれば、思考実験として、のれんの非償却の導入を支持できる。
条件1 M&Aに際して、将来の営業利益率のうち、何%をのれんにより稼ぐのか、これを残余利益率なり免除ロイヤリティ料率として想定し、想定できない金額分はのれんとして計上せず、即時費用処理する。過大な期待による規律なきM&Aを抑止する。
条件2 減損のCFは、独自のCGUではなく、財務報告で営業利益を開示するセグメントを単位とし、想定した残余利益率に満たない場合には、機械的に減損する。定期償却との差として、例えば、M&Aから数年間は残余利益がでないという計画であれば、その猶予期間は残余利益率を0とできるようにしても良い。
条件3 M&Aから年数が経過するにつれ、M&Aで獲得した実質と資産計上額がずれる。少なくとも、定期償却を選べるようにする。10年後はのれん分をブランド資産に含めても良い。